僕が急いで学校に向かうと生徒達の様子がいつもと少し違うことに気付く。

3年生の谷川という生徒が昨日の帰り道、事故に遇い亡くなったらしい。

交通事故だと聞いたが、この谷川という生徒の死が夢野のせいであるという噂が
なぜか広まっていった。

誰がそんな話をしたのかは分からないが、僕は怒りを抑えられなかった。

「やっぱり、どうかしてるんだ。この学校は。」

僕は夢野に言った。

夢野は何も言わない。

「この学校で誰かが死ねば、みんなそれを夢野のせいにするつもりか?」

その時、教室にあの2人組が入ってきた。

昨日夢野を呼び出した3年の2人だ。

「いや~驚いたよ。夢野君!」

その声で教室にいた生徒達が2人組に注目した。

僕は夢野を見た。夢野は表情を一切変えない。

「みんな!聞いてくれよ!!実は俺達、昨日夢野を屋上に呼び出したんだ」

その3年の男子は夢野を見て笑う。

「そこには谷川もいた」

その言葉にクラス中がザワザワし始める。

「夢野は眼帯を外し、その右目を谷川だけに見せた」

僕は立ち上がった。

「何言ってるんですか!!そんなの嘘に決まってる!」

僕のその言葉を無視して3年の男子は話を続けた。

「そして、この通り・・・谷川は死んだ」

みんなは完全に信じきっていた。

「そろそろ君も危ないんじゃないか?空野翼君」

僕は3年の男子2人を交互に見た。

「それはどういう意味ですか?」

僕がそう言った時、夢野は立ち上がり僕の肩に手を置いた。

「空野・・・やめてくれ。」

僕は夢野を見た。

「夢野・・・あいつらの話は本当なのか?」

僕の声は少し震えた。

「たしかに、俺はあいつらに呼び出されて屋上に行った。
その時・・・谷川って奴もいた。」

みんなが怖がって夢野を見ている。

僕は目を見開く。

その時、チャイムが鳴った。

クラスの担任が教室に入ってきた。
先生は僕達の様子を見て不思議そうな顔をする。

「みんなどうしたんだ?」

先生の声が僕の耳に入ってきた時、僕の中で何かが崩れる音がした。

僕は気が付いたら教室を飛び出していた。