僕はその写真を見て「あっ!」と声を出してしまった。

その写真に写っていた少年は、僕がずっと夢で見てきたあの少年だった。

「類君と、類君の母親ですね?」

その写真に写る2人はとても幸せそうに笑っていた。

「これ、俺が撮ったんだ。」

新一さんはそう言って写真を見つめる。

「俺にとっても、もう息子のような感じなんだ。
だけど俺は、類の父親にはなれない。
あいつは今でも父親というもの自体を酷く嫌っている。
それなら俺は兄になってやろうと思った。
あいつは兄を欲しがっていたし、
一人っ子だった類にとってそれが凄く嬉しかったらしい。
小2だった類は、それから俺のことを新一兄さんって呼ぶようになった。
本当はおじさんなんだけどな。ははっ。」

僕は微笑んだ。
そして、僕は夢野の目のことを考えた。

「新一さんがもし、類君の右目を見ていたら・・・
どうなっていたと思いますか?」

それを聞いた新一さんは、優しく笑う。

「生き続けるさ。俺は類より先には逝けないよ。
どんなことがあってもね」

僕はその言葉が嬉かった。

新一さんは写真に写る夢野と、夢野の母親をしばらくずっと見つめていた。

「でも、類の中にまだその考えがあったとは思わなかったね。」

新一さんは寂しそうに言った。

「空野君、君は今どう思ってる?」

今ここで僕の考えを全て話したらどうなるだろう。

「僕は、類君に出会えて良かったと思ってます」

僕はとりあえず、本当のことを言った。
今は新一さんの気持ちが分かっただけで嬉しかった。