「新一さん、類君の話はもうだいたいのことは知ってます。
あの右目の・・・眼帯のことも。
最初は何も知らずに類君と一緒にいました。
でもクラスの皆が・・・」

僕はそんなことより、新一さんの考えが知りたかった。

「あの目を見たら、人が次々に亡くなっていく・・・。
本人もそう言っていますし、あの学校の生徒達も信じています。
おかしいと思いませんか!」

僕がそう言うと新一さんは溜め息をついた。

「類はそんなことを言っているのか・・・」

僕は新一さんの言葉を聞いて驚く。

「新一さん・・・知らなかったんですか?」

一緒に暮らしている新一さんが知らないはずはない。

すると新一さんはゆっくりと息を吐く。

「なぜ類が、眼帯を外さないのか・・・最初は分からなかった。
俺の妹・・・つまり類の母親が死に、しばらくして父親が死んだ。
その時から類の右目はずっと痛みに襲われていた。
目が開けられないほどの痛み・・・、
類は俺に右目を見せようとしなかった。
ずっと手で右目を押さえつけて離さなかったんだ。」

新一さんの目は夢野に似ている。
僕は新一さんがコーヒーを飲むのを黙って見ていた。

「結局あいつは、眼帯をしていないと目が痛むとしか言わなかった。」

僕は新一さんを見続ける。

「類君は病院に行きましたよね?
3人の医者に見てもらったと類君は言っていました」

僕がそう言うと新一さんは頷いた。

「1回目、2回目と病院を変えても、
右目の痛みの原因が分からなかった。
薬を貰っても効果がなかったみたいだし」

夢野からもその話を聞いた。

「3人の医者の死について、新一さんはどうお考えですか?」

僕は思いきって聞いてみた。新一さんは僕を見つめる。

「随分と類から話を聞かされてるみたいだね。
驚いたよ。」

新一さんは笑った。その顔はとても嬉しそうだった。

「空野君がその話を聞いてどう思ったのか知りたいな」

僕はその医者の死が、夢野の目のせいだとは思っていない。

「確かに、3人の医者が死んだって話を聞かされた時は驚いたよ。
でもそれが類と関わっているなんて考えは浮かばなかった。
それを言い出したのは類だ。
もしかしたら自分の目のせいで医者が死んだのかもしれないと
俺に話してきたことが1度だけあった。その時俺は否定した。」

僕はそれを聞き、少しホッとした。

「お前のせいじゃない・・・俺がそう言うとあいつは頷いた。
両親の死から、類の性格はどんどん変わっていった。
最初は俺とも喋らなかったし、今みたいに俺のことを
新一兄さんって呼んでくることもなかったよ」

新一さんは、鞄の中から1枚の写真を出した。

その写真には、少年と女性が写っていた。