僕は放課後になると1人で家に向かった。その途中、
携帯を取り出して、新一さんが僕に渡してきた小さな紙切れを見ていた。
夢野の家から出る前に渡されたこの紙切れは、
最初は気付かなかったが、よく見ると電話番号が書かれていたのだ。
ここに電話すれば新一さんに繋がるだろう。
新一さんがこの紙を渡してきたということは・・・。

僕はこの番号にかけてみた。

「もしもし」と、電話越しから聞こえてきた新一さんの声。
僕はホッした。

「新一さん。空野翼です」

僕は1度、新一さんと話がしたかった。
もちろん、夢野のことについてだ。
すると新一さんの方から今から会おうと誘ってきた。

「もうすぐ仕事が終わるから、車でそっちに向かうよ。
今どこにいる?」

僕達は電話で、これから会う約束をすると電話を切った。
僕は辺りを見渡した。
夢野はいない。
最近は1人で帰ることが多くなったし、
夢野がどこにいるのかは分からない。
できれば新一さんとは2人きりで話がしたい。

僕は待ち合わせた場所で新一さんを待った。
待っている間、新一さんに話したいことを頭の中で整理して
まとめようとした。

その時、黒い大きな車が僕の前に止まって驚いた。

車に乗っていたのは新一さんだった。


「やぁ。空野君。体調は大丈夫かい?」

僕が車に乗ると新一さんはそう言った。

「はい。大丈夫です。この前は本当にありがとうございました」

車は僕の知らない道を走り、そしてある店の前で止まった。
僕はよく分からないまま新一さんについていった。
新一さんと僕はオシャレな店の中へ入り、
そして個室へと案内された。

「ここは俺のお気に入りの場所でね。
仕事仲間と来るときもあれば、1人で来て
お酒を飲むことが多いんだ」

新一さんはそう言うと笑顔で僕を見た。

「もちろん、今日は飲まないから安心して」

僕は周りを見渡す。
ここなら誰かに会話を聞かれる心配がない。

するとノックの音が聞こえ、女性が部屋に入ってきた。
コーヒーを僕達の前に置くと、すぐに出ていった。
新一さんはコーヒーに砂糖を入れる。

「それで・・・何か俺に話したいことがあるんだろう?」

新一さんは、僕が今何を言いたいのかほとんど分かっているのだと思った。