教室に着くと、周りの態度はいつもより更に悪化しているように感じた。
僕達のことなどまるで見えていないかのようだった。
見えていないフリをすることに決めたのだろうか。
秋山も結局、僕達を避けて近寄ることも話しかけることもしてこなかった。

それは、自分達が助かるための最善策だと皆は考えているのだろう。
たしかに分からなくはない。
きっと僕も、初めからこの学校の生徒だったら、
夢野の噂や青木直弥の死に恐れ、みんなと同じ行動をしていたかもしれない。

いや・・・していただろうか?

僕は自分の席に座った。
この席は、青木直弥の席だった。
青木直弥とは、どのような生徒だったのだろう。
僕は斜め後ろの方をチラッと見た。
伊達友希が座っている。
伊達は青木の親友だと言っていた。

「なぁ・・・」

後ろにいる夢野が僕に声をかけた。

「俺、今日の帰りは1人で行きたいところあるから」

夢野はそれだけ言うと窓の外を眺めた。



僕達はそれから、ずっと周りに避けられながら学校に通い続けた。
1週間、2週間と日がたつにつれて、
だんだんと、避けられることが当たり前のようになってきていた。

夢野は学校が終わると1人でどこかに行くことが多くなり、
放課後は1人で過ごすことが多かったが、あまり気にしていなかった。

その日は、学校から出てボーッとしながら歩き、少し遠回りして家に帰った。
家の前に着いた時、僕は家の鍵がどこにもないことに気が付いた。
思い当たるとしたら、今日の最後の体育の授業で体操着に着替えた時か
自分の席で鞄の中を整理していた時か・・・。
僕は仕方なくもう1度学校へ向かった。
家から学校が歩いていける距離で良かったと思った。
僕は学校に着くと教室に向かった。