僕は夢野の部屋のソファーに座った。

「夢野の部屋、広いな。驚いたよ」

僕は気分がすっかり良くなっていた。
さっきまで高熱だったというのが嘘のように、
頭痛もなくなりホッしていた。

「さっきの・・・眼帯の話だけど・・・」

僕は倒れる前のことを思い出した。

「夢野。その眼帯を外してくれよ」

僕は言った。夢野は目を見開いた。
僕がこんなことを言うなんて思っていなかっただろう。

「何言ってんだ。無理に決まってるだろ」

夢野は僕から目を反らして言った。

「まずは、俺の過去を全て話す。聞いてくれるか?」

夢野が言う【過去を全て】とは、
今まで僕が知らなかった真実を全て話してくれるということなのだろうか?

「ああ。分かった。聞くよ」

僕は夢野の左目を見ながら言った。

「俺はずっと眼帯をしている。
両親が死んでからずっと。
あの学校のほとんどの奴らは、
俺に触れることもそうだが、
この眼帯をした右目に恐れている」

夢野の体が少しだけ震えているのが分かった。

「青木直弥が死んだ時、俺は眼帯を外していたんだ」

眼帯を外したという言葉を聞き、僕は少し恐くなった。

「俺は1人で屋上にいた。
その時、突然右目の痛みに襲われ眼帯を外した。
あまりの痛みにその場から動けずにいたら
青木は1人で屋上にやってきた。
誰も来ないはずの屋上に青木が来た時は驚いたよ。
俺はすぐに青木が右目を見ていることに気づいた。
青木はそのまま屋上を歩き・・・、
俺は痛みでそれどころじゃなかったが、
青木が屋上から飛び降りようとしているのを見て
すぐに青木の方に走った。
だが右目の痛みで視界がぼやけていたし
うまく体が動かなかったんだ。
青木の名前を叫んだ時にはもう遅かった。
間に合わなかった。」

夢野はしばらく俯いたあと、ゆっくりと顔をあげて僕を見た。


「青木は屋上から飛び降りて、死んだ」


長い沈黙が続いた。

額の汗を拭き、僕はゆっくりと息を吐いた。

「その出来事が起きる前から、
俺がずっと眼帯をしていることで、
色々な噂が広まっていた。
俺の両親がいないことは皆知っているし、
その事が原因で、
『あいつの目は呪われている』とか
『あいつが親を殺した』とか、
色々言われていた。
たしかに、ずっと眼帯をしているのはおかしいし、
不思議に思われても仕方がない。
しかし、青木が俺の前で死んだことで
その噂が本当であったことを皆は信じた。
青木の親友である伊達は狂ったように
青木が死んだのはお前のせいだと
何度も繰り返し怒鳴り続けたし、
クラス中が俺を本格的に疑った。
だから俺は、
この眼帯をしている意味を教室で、全員に教えてやった」

夢野の声はだんだん大きくなっていった。

「この眼帯をしているのは、
俺の右目を見た者や触れた者は死ぬこと・・・
俺の父親や、俺の目に関わった医者3人が死んだこと、
青木が俺の右目を見てから死んだことを全て話し、
それが真実であることを伝えた。
更に、右目だけではなく俺に触れただけでも
もしかしたら死ぬかもしれないから、
近付いたらどうなるか気を付けた方が良いという脅しもかけた。」

夢野はそこまで言うとフッと笑った。

「そう言えば、誰も俺に近付かなくなる。
それで良いんだ。
俺だってこれ以上、人が死ぬのを見たくない」

夢野は真顔になり、真剣な顔で僕を見た。

「何も知らない転校生に、
いきなりこのことを話しても信じないかもしれない。
それに、転校生の席はあの青木がいた席だ。
だから俺達は態度で示した。
転校生が俺に近付かないように・・・。
空野が、俺に近付かないように」

僕は夢野の話を黙って聞いていた。
これが真実であると、僕は受け入れなければいけないのか?

「・・・夢野の・・・、父親と・・・
3人の医者は、どうやって死んだんだ?
青木みたいに、どこかで飛び降りたわけじゃ・・ないだろ?」

声が震え、うまく喋れない。