少年の叫び声が響く。
僕はゆっくりと目をあけた。

僕の横に夢野がいた。

「目、覚めた?」

夢野は優しい目で僕を見つめながら言った。

初めて夢野に会った時もこんな目をしていた。

僕は目から涙が溢れてきた。

「どうした!?」

夢野は驚いて僕を見る。僕は目を瞑った。

「わからない。ただ・・・嫌な夢だった・・・」

僕は腕で涙を拭いた。

「お前が倒れた時、一瞬死んだのかと思った」

夢野はベッドの横にある椅子に腰掛けた。

「そんなわけないだろ・・・」

僕は起き上がろうとしたが夢野はそれを止めた。

「さっきまで凄い熱があったんだ。
まだそのまま寝てろよ。
また倒れられたら困る」

夢野にそう言われ、僕は仕方なく横になった。

「夢野は平気なのか?
夢野だってあんなに雨に濡れただろ?」

屋上でのことを思い出す。
一番雨に濡れていたのは夢野だった。屋上で仰向けになったまま雨に打たれていた。
その時、夢野はゆっくりと近付いて、僕の額に手を置いた。

「お前は、俺じゃなくて・・・自分の心配をしろよ」

夢野は悲しい表情でそう言った。

「これでお前が死んだら・・・俺は・・・」

その時、部屋の扉が開いて1人の男の人が入ってきた。

「あれ?目が覚めたのか?」

その男の人は僕を見ると優しく笑った。

「やぁ、はじめまして。空野君。
君の話は類から聞いてるよ。
俺の名前は新一だからシンって呼んで」

新一という人はテーブルに飲み物などを置くとソファーに座った。

「俺の母親の兄で、俺は今この人と暮らしてるんだ」

夢野は僕から離れ説明をし始めた。

「で、ここは俺の部屋だ」

夢野はそう言われ僕は部屋を見渡す。

「え!?ここ夢野の部屋なのか!?」

僕は驚きを隠せなかった。あまりにも広すぎる部屋だった。

「お前が倒れてから、電話して新一兄さんに車で来てもらったんだ」

夢野がそこまで言うと、新一さんが嬉しそうに笑う。

「熱下がったみたいで良かったな!
ゆっくりしていきなよ。
もし良かったらこのまま泊まっていけば?」

新一さんは明るくて優しそうな人だった。
目だけが夢野に似ていた。
夢野の母親の兄ということは、何歳になるのだろう。
僕にはとても若く見えた。

「じゃ、俺はこのへんで。何かあったら呼んで」

新一さんはそう言うと部屋から出ていった。

再び2人きりになり、沈黙が続いた。

「なんか、迷惑かけちゃったな。
まさかあんな所で倒れるとは思わなかったよ」

僕はゆっくりと起き上がった。

「今日はこのまま泊まっていけ。
・・・それに、
話したいこともある」

夢野にそう言われ、僕はしばらく考えてから頷いた。

「僕も・・・話したいことがある」

僕は今、自分が思っていることを全て夢野に話そうと決めた。