その眼帯をした男子は、僕をじっと見つめている。

すると僕の前にいた男子達は、逃げるように走って行ってしまった。
気が付けば僕とその眼帯男子の2人きりになっていた。


「お前は逃げなくて良いのか?」


眼帯男子は不思議なことを言った。僕はよく分からなかった。

「何で逃げるの?」

僕がそう聞くと、眼帯男子は目をそらす。

そして、何も言わずに僕を置いて1人で歩き出した。

「え?ちょっと待って!」

僕は歩いて行ってしまう眼帯男子を追いかけた。

「あ・・・僕、転校生の空野翼って言うんだけど・・・」

僕はさっき拾ったノートを鞄の中にしまいながら言った。
しかし、眼帯男子は歩くスピードをどんどん上げていく。

目の前に学校が見えてきた。
僕はそのまま追い続ける。
もうすぐ正門の前に着く頃
僕は思いきって息を吸った。

「名前、教えて!!」

僕は思ったより大きな声を出してしまった。

すると、正門の前で眼帯男子は立ち止まる。

風で髪が揺れ動く。

「・・・・・・。」

眼帯をした男子はゆっくりと振り向いて僕を見た。

「夢野類・・・。」

しばらく黙ったあと、
眼帯をした男子はそう言うと、僕を見る。
眼帯をしていない左目がじっと僕の目を見ていた。
僕はなぜがその場から動けなくなった。


「・・・じゃあな。」


夢野は静かにそう言うと、行ってしまう。

僕はしばらく、その後ろ姿を見つめていた。


声は冷たく、笑顔もなかったが、

目が合った時から、

彼は優しい目をしている、とすぐに思った。