キスをされた頬に触れ、僕は秋山のことを考えていた。
秋山に会ったらどんな顔をすれば良いのだろう。
あと少しで待ち合わせの時間だった。
今日の朝は昨日とは違い、雲が多く今にも雨が降りそうな天気だった。

「おはよう!」

秋山の声がして心臓が跳ね上がった。
秋山はいつも通りの態度で僕に接してきた。
まるで、何事もなかったかのように。

いつもと違うことに気付いたのは昼休みだった。
今日の秋山は僕から離れようとしない。
授業中も、移動中も秋山と一緒だった。
昼休みはいつも他の女子達と一緒に過ごしているのに
今日は僕と2人きりだ。

「これからは昼休みも、空野君と一緒にいたいな」

秋山はそう言うと僕を見る。

「バレーボールは良いの?」

僕は秋山がいつも昼休みにバレーをしているのを知っているので
そう聞いてみると、秋山は首を振る。

「大丈夫。空野君と一緒にいたいから」

秋山の様子が少し変だった。

僕がこうして話ができるのは秋山と夢野だけだ。
僕は秋山と夢野の3人で話がしたいと前から思っていた。

「なぁ、屋上に行かないか?」

僕は思いついたことを言った。

すると秋山は顔色を変える。

「どうして?」

秋山はそう言うと僕から目を反らす。

「俺達、昼休みはいつも屋上にいるんだ。
あそこには夢野しかいないし・・・」

僕はそう言いかけてハッとした。

それだけはないと、僕はずっと思っていたし、勝手に信じていたのだが、
どうやらそれは僕の勘違いだったのかもしれない。


秋山も夢野のことを避けているのだろうか?
秋山にそのことを聞いたらどうなるだろう。
とても怖くて聞けなかった。

「僕は屋上に行く。秋山も来る?」

僕はそう言うと秋山は首を振った。

「そう・・・。じゃぁ気が向いたら来てよ。」

僕はそう言うと1人で屋上へ向かった。

間違いない。秋山も夢野を避けている。