「どうしてだ?どうして何も教えてくれないんだ!」

僕が大きな声を出すと夢野は持っていた本を地面に置いて体を起こす。

「何も教えていないだと?ふざけるな。
正直こっちもお前の行動には驚いてる。
田口や磯谷は常にお前の近くにいて、
お前が俺に近付かないようにしていたし、
そして俺はお前を避けるようにして行動をしてきた。
それで良かったんだ。」

夢野は息を吐く。

「みんな俺のことを嫌っている、と言うよりも
恐れていると言った方が正しい。
だから俺のことを見れば逃げて行くし、
避けようとする。
そんな場面を見ていれば普通は俺に近付かない。
お前は普通じゃなかった。」

みんなが夢野を恐れているのはなぜだろう。
それに、普通じゃないと僕は人に初めて言われた気がする。
僕はどこにでもいる普通の高校生で、
むしろ普通過ぎて僕は前の学校でイジメられていたはずなんだ。
僕は思い出したくないことを思い出した。
イジメられていた記憶。
話したくない過去。
もしかすると夢野には話したくない秘密があるのか。
それなら僕にもある。
前の学校での出来事は全て、誰にも話したくなかった。

「わかった。理由は分からないままで良い。
みんなが夢野のことを恐れていても、
僕は恐れてないし、
これからも夢野とは話をする。
夢野も、僕を避けるのはやめてくれないかな」

僕がそう言うと夢野は溜め息をついた。
しばらくすると僕を見た。

「そうか・・・分かったよ。
お前がそういうなら仕方ないな。
転校生・・・いや、空野翼。
俺はもうお前を避けない。
むしろ、常に行動を共にしてやるよ」

夢野は右目の眼帯に触りながら、僕を見て笑った。