ここは体育館。

エアコンがないから、夏は暑いし冬は寒いしで俺は嫌いだ。今は春だから、全然いいけど。


始業式は、校長の長い話から始まって、今は新任のセンコーの紹介。
新任のよろしく、的な話はもう飽きた。そろそろ、帰りてぇな。


「うわ、あれ、俺らの担任だって」

小暮に何度も何度も肩を叩かれる。


その手をどけながら舞台を見ると、話しているのは黒くて大きい眼鏡をかけた女。


よかった、すげぇ大人しそうじゃん。

担任が、ああいうのなら、何も口出ししてこねぇしな。



「冴えないなぁ~、もっと美人がよかったぜ」

ったく、マジうるせぇ、こいつ。ずっと隣でペチャクチャ喋りやがって…
回りがどんだけ迷惑してると思ってんだ。


「お前、前行け」

「やーだね。俺がいないと秀司が寂しいでしょ~」

「…頭おかしいんじゃねぇの?お前と話してると吐き気がする」

「吐き気でも何でもしてくださいよ」


うぜぇ。

大体、おかしいんだよ。


俺の苗字の藤吉と、小暮っていう苗字が隣になるはずねぇんだよ。

そんなの、人口減少化にある町の小学校ぐらいだろーが。

わざわざ俺の隣に来て騒ぎやがって…
迷惑してることに気づけ、馬鹿。

始業式にわざわざ来てやったっていうのによ。
その上、視界に入ってくるさっきの気弱男は俺が喋る度に震えてるし。



なんなんだよ、マジで。

怖がられたいわけじゃねぇのに。


俺を呼び止める小暮の声を背に、屋上へ向かった。