それが、昨夜の事。


あの時の笑顔は、嘲笑と言った方が正しいかもしれない。

「会ったことあるんだよ、きっと何所かで」

その声が東を現実に引き戻す。

「覚えてないです」
顔を伏せる東は、自分は何て女々しいのかと心の中で叱咤する。


「でもさ、東君。愛を膨らませ過ぎるのも良くないよ」

まるで全てを知った様な厭らしい口振り。




―――煩いから黙ってくれませんか。