今、欲しいのは暗闇だけ。



「………もうすぐ夏休みじゃん?」


唐突な。


「うん」


ポップコーンをぽりぽり食べなから頷いた。

それをみて、篠田も私の方に手を伸ばす。


「…プールとか行かねえ?」


前を向いたまま、篠田はポップコーンを口に放り込んだ。


「プール?」まさか2人で?


「泳ぎたいんだよ。俺、水泳部じゃん?」


「知ってるよ、胸筋自慢してるじゃん。うー…行ってもいいけど…私、スクール水着しか持ってないし、」

「えっ?」


篠田は、急に背筋を伸ばした。


「スクール水着、嫌いじゃない。岩崎、似合いそう」


「…」


私は冷ややかな目で、嬉しそうな篠田を見た。


スクール水着は、冗談です。


「なんだ…そうなんだ」


バツの悪そうな篠田。

ちょっと気まずくなった。


スクリーンでは、NYの街が早速大パニック。


小さめの隕石が、大気圏関係なしに、火を吹いたまま落ちてくるのだから。


「岩崎」


「ん?」


「お前、進路どうする?」


「んー考えてない」


なんで、今、話し掛けてくるかな?集中できないじゃん。


「俺、東京の大学に行こうと思ってるんだ」


「…」


私は、ポップコーンを噛み砕くのをやめて、肘掛に手を置いた。