「あ、私のもお願い」
私が自分のポシェットをゴソゴソやるのを無視して、何にする?と訊く。
コーラ、と答えると篠田は、ぱっと弾けるみたいにして、階段を降りていった。
「コーラ、一杯分しかないって。お詫びだって、ポップコーンくれた」
影みたいな篠田は、折りたたみ式の座席を手で押し下げて、言った。
私と篠田の間に、ポップコーンとコーラが置かれた。
「ありがとう」
篠田の分の飲み物がないのが気になったけど、喉カラカラの私は、ストローを咥えた。
「…炭酸イマイチ」
誰もいないから、私は堂々と言った。
「まじ?」
篠田は、ジュースホルダーに置いた紙コップを手に取り、ひと口飲んだ。
「…ほんとだ。金返してもらいたい」
「…」
間接キスになりましたが。
この件については?
「…あいつ、誰だ?」
私の心の中の疑問を打ち消すように、スクリーンに映し出されたマイケルを指差した。
「ジェームズの同僚だよ」
教えてやったのに、篠田の思考は、実は、全然違う方向に向かっていたらしい。

