『志乃~?』 ああ、やっぱダメ。 「…」 見せた弱味は握られて、彼に魅せられ惹き付けられ。 私はそこで、溺れるのを感じる。 『しーのー』 名前を呼ばれるたび、私の感情の名前が揺さぶられて震え出す。 「…」 声にならないこの感情が。 まるで月に伝わるような。 そんな感覚。 『ねぇ、志乃?今夜は、』 それはきっと、彼も同じ。 『─月が綺麗ですね』 私はゆっくりと目を閉じた──。 *END*