腕で頭を抱えながら、カズは小さな声でつぶやいた。


「あんなに大好きだったのに」


そう言ったカズは、今まで知っていたどんなカズよりも繊細で、もろくて、儚くて。


俺は今までいったい、カズのなにを見ていたのだろうと情けなくなった。


「もっと早く、相談してくれればよかったのに」


うずくまるカズを見下ろしつぶやく。


「……って言っても。
俺もカズと同じで。
乃愛にはまだ……。
“好き”って伝えられてないけどな」


自嘲気味にハッと息を吐き出すと、カズが顔をあげて俺を見た。