塾に行くことは大好きです。
もちろん理由は佐伯先生に会えるから。
だけど中学校は大嫌いです。
別に勉強はできないわけじゃないんだけどね。授業外での時間がとてつもなく嫌いで、できることなら家に引きこもっていたいんです。
だって私、教科書読めば大概理解しちゃうし。もしわかんなくても、新堂先生に聞けば済むことだし。
だから学校に行く意味なんてなーい!
っていう私の屁理屈を許してくれないわからず屋がいます。
「るぅちゃーん。迎えに来たよ!
準備できてる?」
私の部屋にズカズカと入ってくる幼なじみの関口 涼介(せきぐち りょうすけ)。
いつからかは覚えてないけど、涼介はなぜだか私のことを『るぅちゃん』と呼んでいる。
そんなキャラしてないのに、私。
「嫌だ。無理。眠い。さよなら。」
「はーい。まずは着替えてね?」
壁に掛けてあったはずの制服は、私の目の前に突きつけられる。
多分ここで反論を唱えたら、私は涼介の手によってパジャマを脱がされるんだろう。
だからいつも有無を言わせぬ涼介のペースに飲まれて、着替えてメイクをして髪の毛までバッチリ巻いてしまうんだ。
「そういや、るぅちゃん前髪切ったんだね!伸ばすのやめちゃったんだ?」
本心を言えば、最初に気づいてくれるのは涼介なんかじゃなくて佐伯先生が良かった。
「やっぱり変かな?似合ってない?」
「ううん!俺はどっちのるぅちゃんも可愛いと思う!」
あー。はい。ありがとうございます。
変じゃないなら何よりです。
「涼介じゃなくて佐伯先生がそう言ってくれたらいいのになー。」
「すんませんねー。イケメン先生じゃなくて俺で。
てゆか、るぅちゃんそろそろ遅刻するから行くよ?」
涼介は面倒見がよくて優しい。
そして何年も付き合いのある幼なじみだからか、私の考えは大体こいつに読まれてる。
私が学校に行きたがらないことは別に誰に言った訳でもないのに、毎日こうして私を迎えに来て、自転車の後ろに私を乗せて一緒に登校してくれる。
別に何も頼んでないけど。
だけど涼介の良心を裏切ることはできないから、学校には行ってあげてる。(あくまでも上から。)