最後の夏 ~十年の想い~



胸騒ぎがする。


全ての部屋を確認した。


何度も名前を呼んだ。


けれど。


…………母はどこにもいなかった。


置き手紙があるんじゃないかと、淡い期待を持ったけれど、どこにも見当たらない。


母は今、重度の認知症だ。


医者には、安静にしているように言われているし、本人もそれは承知している。


だから、今までだって、こんなことは起きなかったのに。


「取りあえず、探しにいかなきゃ……」