*アイラside*


「………はぁ……」


さっきから、自分でも呆れるほど溜め息ばかりついている。


初夏とはいえ、やはり夕方になると、少し肌寒い。


歩調を緩めて、まくっていた袖口をさっと伸ばした。


ユイトのあの表情が忘れられない。


どこか、陰りのある寂しそうな顔。


私のことを覚えていなかったこともすごく悲しかった。


でも、それ以上に、私の腕を離したときのユイトの表情……


なにかに怯えたように、一瞬、アイツの目が揺らいだ。


離れている間になにがあったんだろう。


それよりも、なんで今になって、戻ってきたの?


聞きたいことはいっぱいある。


でも………


私の横を、一台の軽自動車が生ぬるい風を起こしながら去っていった。