そして男は腕の力をなくし、私を手放した。 重力に従って、私は倒れそうになる。 「きゃっ…」 そのとき、ふわっと私を包む優しい腕。 「……大丈夫か?」 目を開けると、目の前にはあの美しい男性がいた。 「あ、はい…。あの、ありがとうございます」 「礼はよい。当然のことをしたまでだ」 そう言うと、男性はそっと私を下ろした。