グザリと一突き胸に、心臓に向かって刺した。
生温い血が僕の服に、手に、顔に飛び散った。
別に気にはしなかった。それよりも人を刺し、肉を突き刺す感覚が堪らなく良い。

こんな事を思うのは変だ…と他人は思うだろう。だが、僕にとって人を殺すのは『快楽』に近いものを感じるのだ。

……奴はゴトリと音を立て、地に伏せた。もう、うんともすんとも言わないし、ピクリと指が動く訳ではない。何故なら奴はたった今僕に殺されたからで。
此処からは奴を自殺に思わせる様に仕組む。まずは奴に刺さっているナイフをハンカチで拭き取る。そうしたら奴にナイフを握らせる。
それが終わると慌てて僕は下駄箱へ行く。脱ぎっぱなしの靴を履き、走りだす。今度は家に引き返す。