「な・・何。」
「いや何って、お前がボーッとしてたから」
「顔覗き込むの、やめてくれる。」
すると、一瞬きょとんとしてニヤリと笑った。
あ。日向がこの顔するときは、ろくなことない。
「あっれー?もしかして照れてんのー?クールな千夏さんでも照れるんだーへー」
ああ、もう。ニヤニヤしながら私の頬をつつくな!
「触るな。見るな。近寄るな。腐るから。」
「腐るとか言うな!!俺かわいそうだろ!!」
身長も伸びて、声も低くなって、顔つきも変わって。
男になったんだなって、感じることが多くなった。
(・・・私だけ、置いていかれる。)
少しの焦燥感と、寂しさと、切なさが残る。
そのうち、お互い恋人をつくって、話すこともなくなって、疎遠になるんだろうな。
それが普通だろうし、仕方がない。
・・・ダメだ、暑さで頭が回らない。
ネガティブなのは夏の気温のせい。
「・・・暑いから図書室行ってくる。」
「おー!・・・あっ。」
私の背後へと満面の笑みを浮かべた日向につられ、後ろへ振り向く。