紅色の瞳

「愛璃亜入るよ。」


「松華…」


「愛璃亜泣きそうな顔してる。」


「しょうかぁ〜。」


今までこらえていた涙が溢れだす。


私は思わず松華に抱きついた。


「愛璃亜?」


「やっと、やっと猪崎と通じ合えたと思ったのに。昨日キスまでしたのに…な

のに、こんな…」


最後まで言葉にできない。


「松華、ごめん。悠一の敵取るって言ったのに、私は恋に現抜かしてしまって

ごめんね。」


「ごめんねは私の方だよ。引っ越しするってもっと早くに伝えられればよかっ

たんだけど…」


「昨日祭りの途中でお母さんに急に話があるって言われて。愛璃亜が危ないか

ら引っ越しするって。」


「私達二人共ついてないよね。」


松華は私の背中を優しくさすった。


「愛璃亜私は自分の荷物まとめに戻るけど大丈夫?」


「うん。大丈夫…心配かけてごめんね。」


私はなんとか笑顔を作ってみせる。


松華が部屋を出て行きドアが閉まる音がする。


引っ越し準備を始めるため私はまず本棚に向かった。


本棚には推理小説から恋愛小説までがずらりと並んでる。まとめて一気にダン

ボールに詰めようとして失敗して取ろうとした本全部が床に落ちた。本が足に

当たって痛い。


床にしゃがんで落ちた本の1冊を拾う。


拾った本のタイトルは『黒薔薇の館』。


“人生に一度しか訪れない初恋を簡単に諦めては行けない。諦めなければきっと


いつか良い方向に向くから”


『黒薔薇の館』で主人公の親友が言った言葉だ。