ファミリーレストランには直哉たちが先についた。レモンティーを直哉が頼むと東雲はオレンジジュースを頼んだ。

「こどもだな。」

「うるせぇ。黙れ。」

「お母さんと一緒じゃないと寝れませんてか?」

すると東雲の様子が変わった。さっきまでの勢いがなくなりどこか寂しげな目をした。

「母親の胸の中で眠ったことがある奴だけだ。そんな言葉が出せるのは。」

「…え?」

すると知らない声がした。

「あの、水柿さんですか?」

直哉が、顔を上げると一人の男が立っていた。

「あっ…はい。水柿とこっちが東雲です。白田信之さんですか?」

「そうです。あの…鳩羽のことって。というかあなた方は?」

「お呼び立てしてすみません。私たちは、鳩羽さんから相談を受けて蘇芳さんの捜索を手伝っているんです。それで関係者の方々にお話を伺っているんです。」

「そうなんですか。」

白田は、納得してくれたようだ。一ノ瀬は、直哉たちを送り出す際、秘密結社『天の邪鬼』の存在は口外するなと言った。存在も活動内容も極秘。まあ、秘密結社ってくらいだから当たり前だが。

「まず鳩羽さんとのご関係を教えていただけますか?」

「ああ…はい。大学の同級生です。同じ経済学部で入学式のとき隣同士になって。同い年で話も合って。鳩羽、2回生の秋ごろに彼女が出来たってとても嬉しそうに話してくれたんです。クリスマスのときとか彼女とのアツアツ話、聞かされたりして。うぜえって思いながら聞いてたけど幸せなんだなって。こっちも嬉しくて。最近は…。」

白田は、目を伏せた。

「そうですか。あの蘇芳茜さんをご存知なのはご友人では白田さんだけだと聞いたんですが。」

「はい、鳩羽は他の奴等にも紹介したかった様なんですが彼女が嫌がったそうなんです。僕は、大学入って初めて出来た友達ってことで彼女に頼み込んで会わせたみたいなんです。」

「蘇芳さんは、どんな女性でしたか?会ってみて感じたことを教えて下さい。」

「感想と言われても…。彼女ほとんど下向いていて目を合わせてくれなかったんです。鳩羽は、極度の恥ずかしがりやって言ってましたけどどちらかというと顔を見られたくないんじゃないかって。別に顔もブサイクじゃなかったし何がそんなに嫌だったのかなって。」

「顔を見られたくない」という言葉に直哉は引っ掛かった。たしか鳩羽が提出していた彼女の写真は横顔や見上げる様に写ったものと正面から写したものが一枚もなかったからだ。

「最後に白田さんが、目撃した彼女と一緒だった男について教えて下さい。」

「年は、僕らと同じ位で背は彼女より少し高かったから170くらいかな?それで美形でしたよ。茶髪で。でもカップルって感じがしなかったんですよね。二人とも深刻な顔していたので。それくらいですね。」

「何か他に目にした物はありませんでしたか?ブランド品身に付けていたとか。小さなことで構いません。」

「そうだな…。ああ、夏なのにやたら厚い生地の服着てましたよ。あと胸にシルバーのネックレスしてました。鳥かな。もうこれ以上は。すいません。」

直哉と東雲は、礼を言い白田と別れた。