家を出て、夜の街へと歩き出す。

「ホムンクルスの始末って言うけどさ」

私の後をついて来る修内太が言った。

「お前、あの化け物の居場所わかる訳?」

「まぁ大体はね」

私は振り向きもせずに言った。

…前にも話した通り、『魔道の匂い』というものがある。

それを辿れば、ある程度の見当はつく。

ましてや暴走したホムンクルスだ。

その強い残り香は嫌でもわかる筈だ。

…既に人の気配のなくなった、静まり返った交差点の真ん中に立ち、目を閉じて気配を探る。

「あっちね」

私が指差した先には、山があった。

それ程標高の高くないその山の中腹に、今では使われなくなった廃工場がある。

そこから漂う、ドギツイ魔道の匂い。

「ほぼ間違いないわ。ホムンクルスはあそこにいる」

「随分ピンポイントだな…」

こんなに簡単にわかるとは思っていなかったのか、修内太がゴクリと喉を鳴らした。

…私は意地悪く彼の顔を見る。

「怖かったらぁ、帰っちゃってもいいのよ?」

それは、彼を試す言葉だった。

貴方も命が惜しくて臆病者の人間なんでしょ?と。

格好つけていないで本性あらわしなさい、と。

しかし。

「何度も言わせるな」

私を置いてけぼりにして、修内太はズンズン歩いていく。

…呆れた。

最後のチャンスだったかもしれないのに。

彼の背中を見ながら、私は溜息をついた。