魔女の瞳

しばらく廊下を歩いていると、ようやく私の探るものへの手がかりらしきものが見つかった。

…廊下に残る足跡。

これだけ埃が積もっていれば、視認するのもたやすい。

足跡の大きさからして、男性だろうか。

しかも学校規定の上履きや靴ではない。

この感じだと…教師ではないだろうか。

最初は教材を運び入れた教師のものかと思ったが、どうも違う。

この足跡は、旧校舎の奥へと進んでいる。

こんな奥にまで、教材は運ばれていない筈だ。

何か別の目的で、旧校舎に足を運んできた者がいる。

しかも。

「……」

旧校舎の奥から、甘ったるい魔道の残り香は強く香っている。

さてさて、何が出てくるのかしら。

頬を伝う汗と共に、私の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

躊躇う事なく、更に歩を進める。

お腹の底の方に、痺れるような感覚。

これ以上進むとヤバイ事になるぞと、本能的なものが最大出力で警報を発している。

ゾク、ゾク、と背筋を走る悪寒。

ここまで強い悪寒ならば、魔女たる私でなくても感じ取れる筈だ。

一般人ならば強い吐き気を催してしまうレベル。

だけど私は引き返そうとは思わなかった。

魔女にとって、命の危険は常に隣り合わせ。

魔道を志す者にとって、死は日常なのだ。

魔道とは己に死を突きつける事。

この程度の悪寒、私にとっては何でもなかった。

だが、少し悪寒の方に気をとられ過ぎていたかもしれない。








後ろから尾行されている事に、これっぽっちも気づかなかったんだから。