☆正樹先輩

長い校長先生の話も終わり、無事に入学式もすんだ。
今から自分のクラスに向かうんだ。
少しどきどきだな。
だって、この学校に知り合いは、あのバカ裕人と正樹先輩に中学の頃に知り合った、甲元遥(こうもとはるか)ちゃんぐらいだもん。
みんな、自分の夢に向かってそれぞれの道に行っちゃったんだ。
私は・・・夢なんてないから。それに、親も裕人と同じ学校に行ってほしかったらしいからね。
それより・・・。遥ちゃん、どこだろう?違うクラスなのかな?
「あ。そーちゃん」
「遥ちゃん!」
遥ちゃんはメガネをかけていて私より少し背の高い子。
とってもいい子なのに、中学の時はいじめを受けていた。
暗い性格がいやだとか言っていたけど、そんなことないのにな・・・。
「遥ちゃん、何組?」
「わ・・・私・・・。2組・・・」
そっか・・・。1人になるのが嫌なのかな。
また、いじめられると思ってるのかもしれない。
「私は、3組だよ。隣だね!お昼とか一緒に食べようよ!!私迎えに行くからさ。大丈夫だよ?何も心配しなくて」
「・・・うん」
「誰その子。空の友達?」
突然会話に入ってきたのはつぼみちゃんだった。
「甲元遥ちゃん。中学の時に知り合った、私の大切な友達だよ」
「ふーん。あたし、つぼみ。綺羅つぼみ。別に覚えなくていいから。だって、あたし、あんたみたいな暗い子と友達になりたくないし」
「ちょっと!!つぼみちゃん!!!遥ちゃんはとってもいい子なんだから!」
どうしてこの子はストレートに物事を言うのだろう。
遥ちゃん・・・泣きそうな顔してるの気づかないの?
暗い子なんかじゃない。とっても楽しい子だよ。お買い物しに行った時だって、趣味とか話とかよく合うし。
よく本を読んでて、そのおかげで私本が好きになったんだから。
初めて会ったばかりの人に、私の大切な友達バカにされたくないよ。
つぼみちゃんより大切な子だよ。
初めて・・・なのに・・・。
「あ・・・・えっと。そーちゃん・・・。私行くね・・・」
バタバタと走っていってしまった。
もっとお話・・・したかったな。
「つぼみちゃん!」
「ごめん、ごめんって」
「そんなにストレートに考えてもないくせにベラベラ言わないでよ!」
「はぁ?文句でもあんの?空?」
・・・これ以上何も言わないほうがいいような気がした。
つぼみちゃんとケンカしてはいけない気がしたんだ。
「空ちゃん。どうしたの?ケンカ?」
突然、正樹先輩が現れた。
「正樹先輩・・・。なんでもないです・・・」
「だよね、空。つぼみ達仲いいもんね。先輩、つぼみ達大丈夫ですよ」
どうして、かわいこぶるの?
さっきまで、自分のことあたしって呼んでたくせに。いきなり、つぼみ?
「いや、俺。君には聞いてないんだけどな。空ちゃんに聞いてるから」
なのに、正樹先輩は何も変わらなかった。
「大丈夫ですよ。正樹先輩。失礼します」
私は、走った。
つぼみちゃんから逃げるように。
つぼみちゃんが怖い・・・。怖いよ・・・。
「あ、空行っちゃった・・・。先輩、名前なんていうんですか?」
「君さ、空ちゃんの友達でしょ?心配しないの?」
「いいんですよ。だって、苦しいときすぐに話を聞こうとしても何も話してくれませんから」
「そういうもんかな・・・俺、教室戻るわ」
「あ!!先輩!!!な・・・まえ・・・。行っちゃった・・・」