北ノ川第一小学校6年2組のドアの前で、緊張する胸を押さえて、夢羽は立っていた。

「えーっと、今日は新しい仲間が加わります。」

担任の石野先生の声がする。

と、とたんに教室がわずかにざわめいた。

「さぁ、入って。」

夢羽は思い切ってドアを開ける。

途端に、周りから注目の目が集まる。

夢羽に注目している子もいれば、ヒソヒソ話している子がいたり、興味なさげに見ている子が
いたり…。

みんな、それぞれのリアクションを取っている。

「きょ、今日から6年2組に加わる、沢宮夢羽です。趣味はピアノと勉強です。よろしくお願
いします。」

そういって、夢羽は丁寧にお辞儀をした。

「夢羽さんの席は…視美ちゃんの隣ね。」

「あ、はい。」

開いている席に座って、隣の子を覗き込む。

「あ、あの…。」

「あなたがうわさに聞いていた、沢宮夢羽さんね。」

「う、うわさ?」

夢羽が頭に『?』マークをたくさん浮かべて聞き直す。

しかし、女の子はそんな様子を気にしないようにして、手を差し伸べ言った。

「これからよろしくね、夢羽さん。」

「は、はい…」

あわてて手を握り返す。

女の子は夢羽から顔をそらし、真っ直ぐ前を向いてから言った。

「あなたは、私たちの仲間入りね。」

「……………………………………………………………………………………………………」



「はい?」



夢羽が頭に『?』マークを10個浮かばせながら、初めての授業が始まった。