「落ち着いて。夢羽さん。」

椅子の上で丸まってブルブル震えている夢羽を視美が背中をさすりながら声をかけた。

「有夜くん。女の子をいじめてはいけませんよ。犯罪になります。」

いつの間にか美女に変身した菜啞耶が人差し指を立てていった。

「俺は別に…」

有夜は相変わらずプリントをベラベラしながらそっぽを向いた。

「まったく…。大丈夫ですか?夢羽さん。私たちもいるので大丈夫ですよ?」

菜啞耶が夢羽に呼びかけると、夢羽が震えながら言った。

「わ、私…れーかんがあるから…れーが近くにいたりすると、すごく感じるんだよ…とくに…夜の学校は…ヤバイ。」

夢羽がそういうと、有夜がばっ!と立ち上がった。

「ホントにれーかんがあるのか?!」

有夜はそういって、キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラと目を輝かせた。

「や…遊びで使うもんじゃないから。れーかんて。」

額に汗を浮かばせながら夢羽が言った。

が、有夜はまるで聞こえないのか、こんなことを言いだした。

「ここにはっ?!ここにはいるっ?!」



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『いるわけねーだろア
ホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』



夢羽と視美の叫び声が木霊し、有夜と菜啞耶はカチーンと固まった。



これから、この『家族』と一緒にここで『暮らす』のかと、先が思いやられた夢羽だった。