【長】野球ボール

「もう泣くなって。ほら、こっちこいよ」


いつまでも入口に立ち尽くしたままのあたしを、一輝が呼んでくれた。


あたしはトコトコと歩いて、一輝に近付く。


「叶夏は?ケガないか?」


泣き続けるあたしの頭を、右手で優しく撫でてくれた。

こんなときまで、あたしの心配なんかしなくていいのに。




「グスッ…ない…よっ」


「そっか、よかった」


「か…ずき…グスッ……ごめん…ね」


あたしをかばったばっかりに、一輝は夢を失った。


「何謝ってんだ?叶夏がメソメソしてると気持ち悪ぃ…」


ただ一つ……

一輝がそこまで落ち込んでなさそうなことが、わずかな救いだった。


落ち込んでないはずないのに。


……まだあたしは理解してなかったんだ。