執事の加藤さん。

でも、


お嬢様は何故か俺の顔を見て、ビックリしたように目を見開いていた。
えっ、なんだ?


「…加藤」

「は、はいっ」

何か言われるのだろうか。
待ち構えていてもお嬢様は何も言わない…。


「まぁいいわ」と少し考えたように、そう言った。分からんぞっ!!


でもその後直ぐに、

「今日一日、あたしの事はお嬢様って呼ぶのは禁止。言ったら殺す」

と、物凄く恐ろしい顔で言われたので、俺はお嬢様が何を言いたかったのか忘れてしまった。


「で、では、歌恋様とかがいいですかね?」

「様いらない」

「歌恋ちゃん?」

「キモっ。ちゃんいらない」

「…………か、か、れん…」

「……」


何も言わないお嬢様。わぁー、呼び捨てはさすがにねぇよな…。失礼過ぎだよな。
黙ってるってことは怒ってるよなぁ…。


「…ぅん」

お嬢様は少し小さな声で言った。
うん、って事は呼び捨てでいいって事!?
お嬢様の顔を見ると、嬉しそうな表情をしているようにも感じた。

何だろう。俺、お嬢様の、名前呼べて…幸せかもしれない。あの人のあんな顔見れるなら、俺は名前を呼ぶだけでこんな幸せだと、思った事は初めてだな。