「だから自覚がないんだね…」

「えっ?自覚?」

「ううん、何でもないよ。こっちの話」


そう言いながら奥村さんは椅子から腰を上げ、「俺はそろそろ仕事戻るよ」と出ていった。


残された俺と、食べかけのご飯。
奥村さんは一体、何を知りたかったのだろう。
俺にはサッパリ分からなかった。


「早く食べて部屋に戻ろ…」


独り言を言って俺は、またご飯を食べ始めた。














「鈍感…」


扉の向こうでそう呟いたお嬢様が、奥村さんと俺の会話を聞いていたなんて、知るはずもない。