君は僕を脅える目で見て、腕を掴む手を振り払った。


そして急いで走っていってしまった。



どうしたらよいか、わからない僕は何も出来ない。



小さくなる彼女の後姿を、ただ眺めている。



「おぬし!何つったってる!」



そんな勢いのある声で、ふっと我にかえった。



振り返ると、杖をついた、お爺さんがいた。



「おぬし10分ぐらい、じっとしてたぞぃ。



がっはっはっはっ…
うぇ〜ゴホッゴホッ…。」


大丈夫か……?
この爺さん……?



「うっおほっん!こりゃ失礼!



それよか、少し見させてもらったぞい。



おぬし、あの娘に逃げられたな。」



「はい…。
僕わるい事しちゃったかな。」



ため息をついて肩を落とした。



「そんな事はない。
あの娘はなぁ、人に嫌われとると言っておるが、



自分から心に壁をつくって、人を寄せつけないようにしてるんじゃ。



じゃが、わしはあの娘、本当は人を必要してるようにしか見えん。



それの裏返しだと、思うんじゃがのう。」



「…」



僕は何も言えなかった。
何も言えなかったけど、



心の奥の方で、熱く、強く思った。



君の事、もっと知りたい

そばにいたい

君にもう一度会いたい。






僕は急いで、彼女を探しに向かった。






っと、その前に……。