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「よっしゃー!俺っち、赤点回避〜」


「ぎりっぎりじゃねーか馬鹿」


「あたしダメだったあ〜、補習かなあ」


「高校初テストで赤点はまずくない?」


「高校なんて、こんなもんだろ!」



「げ、クラス順位も書かれんの?」



「学年順位も出るんだな」




「うちのクラスで頭いいのだれ?」



「誰でもいいから俺っちに勉強教えてー!!!」


「自分でやれ馬鹿」






桜も、綺麗な桃色のじゅうたんを作り始める。

グラウンドに、野外プールに、野球場に、裏庭に、駐車場に。



まだまだ着なれない、大きな制服を、すこーし崩して着たりして。



高校1年生の、春。

今日は、初テスト返却日です。



クラスはがやがや。

隣のクラスからも叫び声が。



私は、窓際の席で、1人、外の景色に目を向ける。

あ、桜。


また、グラウンドに桜の花びらが落ちていった。






「ねえねえねえねえ!花歩っ!」


やたらと高い声で私の席の前に立ちはだかってきたこの子は、私の親友の笹村雛子(ささむらひなこ)。

通称、ひなちゃん。



「見てっ!」


バッ!と、私の目の前にたった今返されたテスト成績表をひろげる。


国語
72/100点

数学
56/100点

日本史
51/100点

生物
62/100点

英語
87/100点



お、なかなか。



「すごいね、ひなちゃん!」


一通り目を通して雛子の顔を見上げると、嬉しさに満ちた表情で笑っていた。


「がんばったでしょ!わたし!」


雛子は鼻歌を歌いながら紙を丁寧に折りたたむと、私の席の前の、雛子の机の中にしまった。



雛子、かわいいなあ。


雛子は小さくて、華奢で、すごく可愛らしい。
裏表がなくて、なんでも話せるわたしの中学の頃からの親友。


同じ高校にはいって、奇跡的に同じクラスになることができたのだ。



雛子は自分の椅子に反対向きに座ると、私の机に頬杖を付いて、意地悪そうに微笑んだ。


「それでぇ?花歩は?高校でも1番?」


「わ、ばか。声大きいよ」



雛子の言葉に、周りのクラスメイトがいっせいに私の方に視線を向けた。



ばか雛子。