どうしてだろう。


母はどうして父のような人を選んだのだろう。
幼いながら、そんな考えは当たり前のように浮かび上がってきた。


母に、一度聞いたことがある。





『どうしてお父さんと結婚したの?』


私のその質問に、母は苦しそうな、悲しそうな目をして答えたんだ。


『あの人は、本当はすごく優しい人なのよ』

と。



優しい、かあ。

私にもお父さんの事を優しいと思える日が来るのかなあ。


そんな希望を抱きつつ、わたしは毎日をすごした。



だけど、毎日続く私と母への暴力は、優しさの欠片すら見えるようなものではなかった。



“恐怖”



そんな言葉で言い表せる。


怖かった。

ただただ怖かった。


そして私は


だんだんと



取り返しのつかない



心の傷を



負っていった。







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