「ららら〜らら〜らん♪」


桜の花が咲き始めて春休みも終わりに近づいて来た頃。



明音はご機嫌そうに流行曲を口ずさむ。


部屋の中でギターを弾きながらポカポカの日差しに当たっていた。



時計をみたら朝の10時だ。



もう3時間ほどギターを弾いていた。



私は3ヶ月くらい前からバイトを始めた。



今は街中の小さなカフェでバイトをしている。


今日も昼からバイトなので準備しようとしたら、携帯からSSNの歌が流れ出す。



着信音にしていたその歌は明音の大好きな曲。




「もしもし、明音?」

「あ、香苗?」



電話をかけてきた人物は親友の香苗から。


明日、2人でデパートに行かないか、との電話。


春休みはバイト以外の用事はないのであっさり引き受けた明音。







仕事場につくと、いつもの仕事服に着替える。

すると、店長さんが更衣室に入ってきた。



店長さんはとっても優しくて、とても若いお方だ。



バイト人数も少ないので私をすごい歓迎してくれた。



「明音ちゃん、今日から高校生の男の子が入ってくるのよ、
言うの遅くなっちゃったけど仲良くしてあげてね。」



「あ、はいっ!」



明音は元気よく返事をした。


店長さんもニコッと微笑んだ。



(高校生っていってたけど、年下かなぁ?同級生かなぁ?)



そう思いながらも厨房へ出ると
誰かとぶつかった。


「ご、ごめんなさいっ!」


明音は頭を下げて謝った。



「いや、別いいっすよ
周り見てない俺も悪いし……」

(あれ、見たことのない人だ。
まさか…)



「君が今日から入る人?
私、橘 明音。よろしくね」


「あ、はい。
俺は
相沢 要(あいざわ かなめ)です。」



(なんか…めっちゃいい人そう!優しそうだし、何より顔がすごい整っておる!!!)


その人の
さらさらの髪の毛は金色に染まっていて、すらっとした高い背で、バイト服をしっかりと着こなしていた。



運動も勉強もできそうで
絶対周りの女子は黙っていないだろう。


仕事中もつい見惚れてしまうときもある。



「いたっ……」


皿洗いをしていたら明音は包丁で手を切ってしまった。



「これ使っていいですよ?」


すると、相沢君は絆創膏を渡してくれた。


「あ、ありがとう!」

「別に…いいですよ」


少し照れながらも心配してくれていた。相沢君とは仲良くなれそうだ。



「今日は遅くまでごめんね〜っ
2人とも熱心に仕事してくれて助かったわ!」



休憩場所では、店長さんが私と相沢君を褒め称えてくれた。



「もう暗くなってきたから
気を付けて帰るのよ」


「は〜い!」

「お疲れ様です。」



せっかくなので家が近いと言うことで途中まで一緒に帰るとこにした。


話によると相沢君とは同じ高校でした。




「相沢君って何年生なの?」

「もうすぐ3年っす」

「え⁉︎同い年⁉︎会ったことないよねぇ」

「え……橘さん3年生ですか⁉︎いや…ちっさw」



その時、明音の周りにピリッと電磁波が流れた。


「絶対年下だと思ってたのに〜
違いました。」


少し照れ気味に相沢君は言った。


「ち、ちっさ……って?
私、155はあるんだよ!!!
からかわないでよ!同い年なんだからね!」



結構大声を出したつもりで

結構怒ってたつもりなのに


それが相沢君には通用しなかった。



さっきからずっと手を口で押さえて大笑いしている…


(もぅひどーい!!!
相沢君ってどんな人なのか全然わかんない!!)



「ごめんってばww」


競歩で進む明音に相沢君は焦ってついてくる。



「あれ、明音ちゃん!
…………と、要⁉︎なんでここに?」



いつの間にか自分の家の前にいて、隣の家からは、いーちゃんと澪先輩の姿があった。



「姉ちゃんこそなんでここにいんだよ!」





(ね、ねえちゃん⁉︎)




まさか澪先輩の弟が

相沢君⁉︎



「どおりで!!苗字が一緒だったんだ!!よく見れば顔も似てるし!」


明音はぱぁっと顔を輝かせる。


いーちゃんと澪先輩はいい感じみたいで何よりだった。