私は部活の帰り道、
喉が渇いたので自動販売機に寄った。
「イチゴオレっ♪」
明音は自動販売機の前で
満面の笑みでイチゴオレを口にする。
飲み干したペットボトルをゴミ箱に捨て、帰ろうとしたそのとき、
どこからか誰かの歌う声が聞こえてきた。
声が聞こえる方向に近づいてみる明音。
声はだんだんと大きくなっていく。
その声は透き通るような美しい声で
私はその姿に驚きを隠せなかった。
「奏兵君!!?」
奏兵はベンチに座り両耳にイヤホンを当てて片手に携帯を持っていた。
彼は私の声に気がつきハッとする。
「ご、ごめん!みちゃまずかった…よね…」
思わず自分が大声を出してしまったことに気づき、
明音は口を自分で塞いだ。
「別に大丈夫です……」
「ねぇ!私、奏兵君の歌好きだな!」
奏兵は顔を赤く染めてゴクリと唾を飲み込んだ。
「ありがとう…」
「うん♪」
「あ、水筒忘れてたよ、
帰り道会えてよかった」
奏兵はカバンから明音の水筒を差し出す。
「あ、ありがと…っ」
(奏兵とは今日会ったばっかだけど凄い優しくて…これから仲良くできそうだな)
奏兵君とは電車が同じだったので一緒に帰ることにした。
「あのさ…奏兵君、
部活とか決めた…?」
明音は奏兵の声に惹かれ、
軽音部に入って欲しいという思いが少しあった。
「まだきめてない…
橘さんは、なに部なの?」
「軽音部♪」
明音は顔の横でピースサインをした。
「そっか…」
それから家に着くまで2人は
一言も言葉を交わさなかった。
「私ここの家だから…
じゃあね」
明音は家の門を開けて
玄関の前に立つと振り返り、
小さく手を振った。
「僕も…入部してもいいかな⁉︎
………軽音部!」
突然の奏兵の言葉に口がポカンと開けたまんまの明音。
彼の顔は真っ赤になってて
真剣な顔だった。
次第に明音は嬉しくなって
頬がピンクに染まる。
「うん!!」
なんでだろ…彼女の笑顔を見るたびに、僕まで嬉しくなってくるんだ。
こんな感情始めてかもしれない_____。
