桜舞う季節に ー君が教えてくれたことー




手術室から出た涼は、


容態が落ち着くまで

別の部屋にいるらしい。



部屋には入れなかったけど、

透明なガラス張りだったから

顔は見えた。


朝以来見ていなかった

涼の顔を見たら、

ずっと不安定だった心が落ち着いた。



「明日には、麻酔から

 覚めると思うから」



その部屋の前まで

案内してくれた看護師さんが

そう言った。




部屋の奥に、涼が眠っていた。



「………涼……頑張ったね」



沙耶が呟く。


「涼が麻酔から覚めたら、

 絢香は思いっきり、笑ってよ。


 それが涼の望みだからさ」


沙耶の言葉に、私は頷いた。