今年の春―――

桜がひらひらと舞う、あの日。




あの日から、

私と鈴香の生活は一変した。



『鈴香ー!ご飯だよ』

その日は、もちろん


お母さんとお父さんは

仕事でいなくて、



家には私と鈴香だけしか

いなかった。


鈴香はまだ8歳で、


中学3年生の私とは、

7歳も年が離れている。



鈴香は、


お母さんとお父さんに

毎日会えないのが、


それなりにさびしかったと思う。




だから私は、

得意の料理で精一杯、


鈴香を笑わせようとしてたんだ。



でも、鈴香はいつも、

寂し気に少し笑うだけで。


お母さんやお父さんといるといる時の、

あの楽しそうな表情は……


私の料理では見せてくれない。



でも、鈴香は

私のたった一人の妹だから。


少なくとも、

私は鈴香が大好きだから。


私はいつものようにご飯を作って、


鈴香が食卓まで来るのを待っていた。



『鈴香ー!早く下りてきてー!』


何度呼んでも、鈴香は来ない。


『鈴香ー!』



2階建ての小さな家に、


私の声だけが響く。




いつもは、呼んだらすぐ来るのに。


どうしたんだろう―――――。


なんだか胸さわぎがして、

私は2階の鈴香の部屋まで走った。