悲劇が起ったのは、 それから数日経った、ある日。 私はいつもと変わらず、 病院に行くために あの桜並木を通っていた。 すると、また桜の木の下に、 例の彼がいる。 でも、いつもと様子が違う。 彼は開かれた本を膝の上に乗せて、 胸を押さえて 苦しそうに倒れていた。 鈴香が倒れた時のことが、 急によみがえる。 周りには誰もいなくて、 病院からも、 こんなところで 彼が倒れている姿は見えない。 どうしよう――――。