桜舞う季節に ー君が教えてくれたことー




次の日も、

彼はいつもの場所に

本を読みながら座っていた。


昨日のことを思い出してしまって、

恥ずかしくなってくる。


なんとなく通りたくなかったけど、

通らなければ

病院に行くことができないんだ。



ちらっと横目で

彼の様子を窺いながら、

私は通り過ぎようとした。


なんでだろう。

彼を見るだけで、

心臓がうるさいくらいに

ドキドキと高鳴るのは。


私は胸を押さえながら、

早足で歩く。


私が見てるのが分かったのか、

彼はこっちを見てにっこりと笑い、

また本に目を移してしまった。