桜舞う季節に ー君が教えてくれたことー






それからのことは、

頭が真っ白で何も覚えてない。




ただひとつ、涼は


一命を取り留めたけれど、


今すごく危険な状態だということ。






もう訳が分からなくなって


緊急治療室の前で崩れ落ちる私に、


沙耶が優しく言った。





「大丈夫だよ、絢香。


 涼は不死身だからさ」




最近は、沙耶に励まされてばっかりだ。



沙耶は、私よりもずっとずっと


辛い経験をしてきたのに。



「沙耶………」



沙耶のその寂しげな笑顔は、


どことなく涼に似ていて。



私の目から涙が溢れた。