不細工な涙

「愛璃(あいり)‼︎」

店に入るなりそう言って迎えてくれるのは、この店の店長。

「ごめんね、開店前の忙しい時間に」

そう言いつつも、帰る気はないのだけど。

わたしが大学に入るのと同じ頃にオープンした、小さなバー。
立地が良いとか安く借りられるとか、それは言い訳で、親元を離れるわたしを見張っておくためだろう。出来の悪い妹だから。