「いえ…、あの時メモするの忘れちゃって」
 
「じゃあ、これあげる」
 
エスパーが差し出したのは、
あたしが屋上のドアに置いておいた新しい料理本だった
 
「そんな、あたしは自分が読んでた方でいいです。新しいのはあなたが…」
 
「…いいんだよ。俺がこっちを買ったんだから」
 
そう言ってエスパーはフワッと笑って見せた
 
…うぅ、そんな笑顔で言われると何も言えない
 
「…わかりました。でも、もしまた次に同じことがあったら、その時は新しいのを受け取ってもらいますからね」
 
「うん」
 
 
爽やかな風が吹いた日だった