ビター・スウィート




「つまらなくていいんだよ。ほら、さっさとデートの続きでもなんでもしてろよ」

「言われなくてもしますよーだっ。行こっ、裕!」

「じゃあな内海、また飲みに行こうぜ」

「おー。じゃあな」



そっけない言い方の内海さんに、彼女・花音さんは少しぶうっと頬を膨らませたかと思えば、コロッと私に笑みを向ける。



「凌の彼女ちゃんも、ばいばい」

「ど、どうも……」



そして小さく会釈をした私に、二人は手を繋ぎ私たちとは反対方向へ歩き出し、傘の波へ紛れて行った。

そんな後ろ姿をチラ、と見て内海さんからこぼされたのは小さな溜息。



「あれが、『カノン』さん……ですか?」

「あぁ。俺の高校の同級生で……っておい、待て。なんでお前が花音のこと知ってる?」

「えっ!?あっ!!」



し、しまった!つい……!

思わず自然にたずねてしまった私に、内海さんはじろりとこちらを睨む。