ビター・スウィート





昨日一晩、ずっと考えてた。彼にとって『カノンさん』がどんな人なのか。

彼女、かな。モテるって言っていたし、聞いたことはないけど、いてもおかしくないもんね。



あんな風に抱き締めたり、するんだ。

ほどかれた腕の力強い感触が、まだ残る。その感触を確かめるように自分の腕を撫でた。

気になる理由なんてないはずなのに、気になって仕方がない。



「……なんで、だろ」



戻ってきた部屋で小さくつぶやくと、バッグから携帯を取り出す。

一晩確認しなかった携帯には、毎日のように届くメルマガが一通と、もう一通メールが届いていた。

誰だろう、そう確認してみると、そこに表示されたのは『広瀬先輩』の文字。

広瀬先輩からのメールだ!



『出張頑張ってる?お土産楽しみにしてるね』



絵文字もない、シンプルなメール。けれどそんなささやかなメール一通にも嬉しくなる。

そう、私の心のなかには広瀬先輩がいるんだから。内海さんを気にする必要なんてない。うん、そうだ。

広瀬先輩へのメールを返信していると、画面の右上に小さく表示される充電のマークは『15%』とかなり減ってしまっている。

あ、まずい。充電が切れそう。

昨夜充電出来なかったから……とバッグを探すものの、充電器自体を忘れてきてしまったことに気付く。



今日はあんまり携帯使わないほうがいいな……。携帯をしまうと、シャワーを浴びるべく浴室へ向かった。