「ちー、少し休んだら?」

「広瀬先輩」



すると声をかけてくれたのは、同じく会議に参加しており私が怒られる一部始終を見ていたらしい広瀬先輩。

茶色い髪はふわりと揺れ、優しい笑顔がその場の空気を一気に柔らかくする。



「またきつい言い方されてたねぇ」

「でもスーッと以外しっくりくる言葉がないんです」

「うーん、まぁでもとにかく、休む時はちゃんと休む。そしたら後で俺も一緒に考えるから。ね」

「……はぁい」



私が考え始めるとひたすら考えてしまうタイプであることを分かっているらしく、彼は言い聞かせるように頭をよしよしと撫でる。その手に、私は持っていたペンを置いた。

……この手、好きだなぁ。大きくて少し柔らかい、先輩の手。



「ちーの頭って、何だか撫でたくなるよね」

「え!そうですか!?」

「うん。髪もツヤツヤでつい触りたくなっちゃう」



広瀬先輩は笑って、私の茶色い髪を指先でつまむ。

髪、褒められた……!毎日ヘアパックしていてよかった!嬉しい!



「え、えへへ、そうですか?嬉しいです」



嬉しさと照れから染まる頬に、それを誤魔化すように私は頭をかいた。するとその時、ピンッ!と髪を引っ張る痛みがはしる。



「いっ!」

「わっ、どうしたの?」

「なんか、髪に引っかかって……」

「あ、本当だ。ブレスレットの金具に髪が絡んでる」



少し髪に触れただけにも関わらず、触れ方が悪かったのかブレスレットに毛先が絡んでしまったらしい。