ビター・スウィート




「わぁぁ〜……」



ところが渋々ついてきたものの、沢山の種類のペンやノート・ファイルがずらりと並ぶ、さすが大きな文具屋という光景に、気持ちは一転し私は目をキラキラと輝かせる。



「すごーい!広い!ノートだけでも沢山あるー!」

「出た、ちーの文具好き」

「うちの商品も結構揃ってるな」



そう、私は元々文具好き。学生の頃から文具屋や雑貨屋を回ってはペンやノートを選ぶのが大好きだった。

普段から仕事で文具なんて飽きるほど見ているから忘れかけていたけれど、やっぱりこうして売り場にある物を見るのとでは気分的に違うものがある。



「このペンケース可愛い!ほしい!」

「ってバカ。他社メーカーの商品褒めてどうするんだよ」

「何言ってるんですか、商品開発には常に他社の良さも吸収しなきゃですよ!」



きゃっきゃとはしゃぎペンケースを手にとる私に、内海さんは呆れたような顔をしてみせる。



「永井、それよりこっち来い」

「へ?何ですか?」



そんな彼に手招きされるがまま、ペンのコーナーへと向かう。するとそこには、売り場に大きく掲示された『カラフルボールペン・カラリィ』の文字。


それは、鮮やかな色が特徴のカラーボールペンで、私が以前頭を悩ませ作り上げた商品POPだった。

『カラフルなペンで、彩る毎日』そのキャッチフレーズで作成したオレンジ色の目立つPOPが飾られた売り場は、商品がまばらに残っている。