「ちー、歩くの早い?」
「えっ!あっ大丈夫です!」
折れそうな心をなんとか保ち、気合を入れ直し歩いていると、こちらに気付いたように先輩は目を向ける。
「そいつが遅いだけだろ。ノロマ」
「なっ!」
「内海、そういう言い方しないの。あれ、そういえばちー、今日雰囲気違う?」
「えっ!そうですか!?」
やった!気付いて貰えた!
悪魔の余計な一言に一瞬ムッとしながらも、気付いて貰えたことにコロッと喜んでしまう。
そんな私に広瀬先輩は何が違うのかを考えるかのように私の姿をまじまじみると「あ、」と気付く。
「そっか、いつもより顔が近いからだ」
そしてそう呟きながら、よしよしと私の頭を撫でた。いつもより近い顔の距離にドキ、と心が音をたてる。
て、天然王子……!
至って自然に不意に距離を近付けるから、心臓に悪い。ドキドキとうるさくなる心臓をおさえる私に、広瀬先輩は笑顔のまま歩き続ける。
「……あざとい女」
あ、あざとい!?
ボソッと呟かれた声に思わず隣を睨むとその声の主、内海さんはくだらないものを見る顔でこちらを見ていた。
それに対し、私も小声でぼそりと返す。もちろん、広瀬先輩に聞こえないように。
「……わ、悪かったですね、あざとくて」
「あぁ、必死に大人っぽくしてみました感が痛々しいな」
「いっ!?」
あざといだの痛々しいだの……いつもいつもこの人は、失礼なことしか言えないの!?
あまりにもな態度にふんっと顔を逸らし歩き続ける。



