ビター・スウィート




「永井ー、ちょっと手空いてるかー?」

「あっ、はい!空いてますー!」



すると丁度タイミング良く部屋の外から声をかけた部長に呼ばれ、私はそのまま席を立ち廊下へと出た。



「……俺、なんかしたか?」

「さぁー?したんじゃないですかぁ?」





顔が、真っ直ぐ見られない。

余計に昨日の姿が鮮明に浮かんで、心をチクチクと刺すから。

あんな笑顔を見せる人がいるんだ、と、所詮後輩でしかない自分の立ち位置が痛いから。



……もしかして私、嫉妬している?

あの子に、嫉妬。いやいやいや。なんで?ない。ないよ。だって嫉妬する理由がないもん。

内海さんのことなんて、別になんとも。



「部長、どうかなさいましたか?」

「あぁ、六階にある資料室に行ってこの資料を探してきてほしくてなぁ」



先程名前を呼んだ中年の上司、部長から渡されたメモには持ってきてほしい資料のリストが書いてある。



「個人データ表、損益管理表……ってことは、セキュリティ式の資料室のほうですか?」

「あぁ。この入室キーを使って入るように」



「わかりました」と頷くとカード式のキーを受け取り、私は六階の一番端にある資料室へと向かった。